「ゆるい」「かわいい」と定期的に話題に上がりがちな「ダホメ王国」の国旗。
いやいや、果たして本当にこの通りのデザインだったのだろうか?
ダホメ王国は120年も前に解散し、現在は存在しない国。この国旗画像は日本語版を含むいくつかの国のWikipediaで使用されているが、公式(なんの公式?)のデータではない。この画像の出どころは、CRW Flagsというアメリカの旗専門店が運営しているサイトだ。
というか、どう見ても適当なペイントソフトで描いてるじゃん、これ。
象のフリーハンド感もそうだけど、王冠の「フリー素材持ってきて乗せました」感。少なくとも、100年以上前のアフリカで描かれたものではない。
この通りのデザインであってほしいとは思う。 無粋なのはわかっているが、少し調べることにした。
他の資料がないか探す
客観的事実が重要である。
本当にこうだったのかはわからないのに、「こんな旗だったんだってよギャハハ」が既成事実化してしまっている。
俺はあらゆる言語でダホメ王国の旗を検索した。
写真が見つかれば一番だが、それは叶わなかった。現地の「ダホメ王国歴史民俗資料館を訪れる」みたいな死ぬほど退屈な映像も見たが、旗は一切出てこない。
奴隷貿易産業で栄えたエグイ国だったとか、アマゾネスみたいな女子軍があったとか、無駄に詳しくなってしまったが、とりあえず今回は世界史はいい、ビジュアルが知りたい。
一応、絵画に描かれたものはひとつだけ見つかった。
出回っているものとはずいぶん様子が違う。縁取りはかなり細めである。
おそらく、これが実際に使われていた旗に一番近いものだろう。
他に見つかったのは、最近になってパソコンで描かれたであろう旗のデータだけだ。
「赤い枠に冠を乗せた象」だった、というのは事実そうだったのであろう。
しかし、当時のアフリカでまったく同一の柄の旗を量産していたとは考えにくく、1枚1枚手書きでいろんな人がそれぞれの手癖で「赤い枠に冠を乗せた象」の旗を作っていたと思われる。
そういう意味では、どんな絵柄であろうと「赤い枠に冠を乗せた象」の旗であれば、それは間違いなくダホメ王国の旗なのである。
あと、Wikipediaは全面的な信用に足るものではないってことね。
例のユル旗は、どこかのオッサンが頑張って描いたんだと思う